人口比2:4

田舎の住宅地で深夜ソコだけぽっかり明るいバイト先には時折、色んなヒトが迷い込んでくる。酔っ払いはもとより、夏場は海ナシ県から来て道を訊くカップル・一方通行路を逆走した挙句に回せなくなり途方に暮れたトレーラの運ちゃん・サツカン・配達員が発見し通報した山火事の場所を尋ねに来る消防署員までいるのだ。今日もキタ。俺の休み明け初バイトに遇わせたように。
そのオヤジはこれ迄も何度か来た事があった。新聞屋の顧客でもあるので経営者も強くは謂えず、クソ忙しい中、追い払えずにずっと居座り延々とサムい駄洒落を独り連発していた。まだ分解される前のいいニオイをプンプンさせて。で、、
引き合うモノがあるのか、帰ろうとした俺がターゲットになったのは必然であった。名を訊かれた。知りたきゃ押したばかりのタイムカード見ればすぐなのだが、ヨッパはそこまでまわらない。というより完璧にスイッチON、喋りたくて堪らない御様子。。
「訊くなら名乗んのがスジやろ?」「我輩は大日本帝国大統領である!」
「へえ…(うあ、ホンモノや!)」「疑っておるな?」
「あ、いえ。じゃあ何やオカシイけど熊沢サンでエエ?」「ありゃ、ご存知でしたか。して、御名は?」
「あーもう、俺は東南西の〝北〟でええわ」「おお。ではこれからはまんぼう君とお呼び致そう」
「括弧仮名な。どーせ三億分の二億九千九百九十八や」「そのワリに他のお人よりトゲが無いようですがね…」
気付くと、俺同様に配達行かない女性陣に注視されていた。彼の人は酔い+程度の差こそあれ、同病者なのは歴然。マシンガントークの合い間に酷く咳き込むそのオヤジにテメェの先を垣間見た気がして無下に出来なかった。が、茶ぁ飲んでたら湯呑みの底にゴキでも見つけたような健常人の目に、何故、最忙時に要求された水に手持ちのブツをありったけ仕込まなかったのかと一瞬悔やんでしまった。
ご免なー、車に解氷剤まで吹いてくれたのに。だってアンタ明日は来ぃへんやろ……