キーワードなんてなかった時代 −Ⅰ
寒かったから猫をひろった
暖かくなりそいつを捨てた
ひとと出逢って共にわらった
じゃまになったら、だれより憎んだ
自分がいちばん大切で、自分が死ねばせかいも消える
それは誰もが知っている
寒かったけど、なにも無い
虚ろな蝸牛に響くこえ
欠けレンガの羅列にぶちまけた乳清、表面張力を割った重たい粒子
濡れて破れたペイパーバック、くだけた硝子と紙巻の灰
グラスの底でかわいた液体
それとおれとはどうちがう
生臭い雨は痛いほどに飛沫をあげ、そしてやまない
あふれて、溢れて、あふれて
想像せよ
そうしなければやさしくなれない欠けた者よ
愛しかたを受継がなかった寂しき者よ
みずからその力を創造せよ
在る、そう信じるちからだけは誰にでも、有る