保菌者

情操不安定、鬱っぽが抜けないので辛気臭く葬式のハナシをしよう。
土地柄・宗派によって色々な遣り方があり、厳然と決められたそいつに乗っ取って粛々と執り行われるソレは、ときに慣習異端者の度肝を抜くようなコトがある。今棲むここいらは近所の葬儀で4、5日仕事休むのは当然、奥さん方は何故か『芋煮会』のようなマネまでする。
俺が兵隊時代の頃、当時の直属係長殿(機関だったので隊長とかは居ない)の親父さんが亡くなられた。勤続ン十年・後数年で定年の技官係長のオヤだ、大往生である。んで、、
皆で葬儀に行った。寒くて、たぶん今頃の時期だったと思う。当時は制服が緑に変更中で、殆どが灰色の腕に黒い腕章を付けていた。
自宅葬儀の係長のウチは狭く、俺達官品組は全員庭から坊主の読経を眺めていた。祭壇も、故人の遺影すら見えず、ただ半間の障子に座す坊主の派手な袈裟をボオォ〜っと。小坊主が傍に付いていたのは画期的だなァとは考えていた。死んだ本人知ってるワケでもない、感慨に耽るのは元より泣くヤツなぞあろうハズもなく。「寒いなー早く終わんねぇかなーツマンねぇなぁ」が、小雪まで舞い始めたオモテ集団の総意であった(に違いない)。
そのとき、起こった。
読経が終わるやいなや小坊主が立ち上がり、毛バタキ(羽根で出来た、ホコリ取るヤツ)状の物体を大坊主に手渡すと障子の影へ。俺らには見えぬ祭壇側である。そしてやおら大坊主が立ち上がると、「ヤアッ!」とかゆー掛け声と共に毛バタキの握り先端を祭壇に向けて投げつけたのだ。シュタッとナニかに刺さる音まで聴こえた気がした…


や、そりゃあビビったケドね。まあ、そーゆう宗派だったんでしょうな。
観衆の目から隠された祭壇にはきっとドでかい『的』が据えてあって、付いた握り手を小坊主が思い切り回す。勿論、『的』はカラフルに色分けされ切り分けたケーキの如く線が引かれ〝天国〟〝地獄〟〝生き返る〟と書いてあり――
コレ、堪らず小声で云ったらオモテ組、皆感染。どーしよーも無くなって課長以外全員焼香もせず中途離脱。
あの時はすみませんでした!(そして、そういう宗派のヒト、ゴメンナサイm(_ _)m)


今日葬式なんやケドな。行くか行かんかビミョーな縁で迷ってる。自宅葬儀やしな、ヤバ気